溺愛なんてされるものじゃありません
「…もう限界。赤崎、そろそろ返事を聞いてもいいか?」

私を抱きしめながらそう言ってきた。返事…か。

ん?返事って何の?

私の頭にはクエスチョンマークがポンポンポンと浮かび上がる。

「あの…返事って何のことでしょうか?」

私の言葉を聞いて主任はゆっくりと私を離し、静かな声で私に聞く。

「…俺、赤崎に告白したと思ったんだが。」

「こ、告白っていつ?…あっイルカショーの後?」

私はイルカショーの後に言われた『俺、やっぱり赤崎の事好きだわ。』という主任の言葉を思い出した。

「いや、一緒にワインを飲んだ時だけど…。」

私はワインを飲んだ日の記憶を思い出してみる。キスされた事で頭がいっぱいになっていたけど、そういえばそれっぽいの言われたような…。

『高成じゃなくて…俺じゃダメか?』

思い出した私はパッと主任の顔を見る。

「もしかして…告白と認識されてなかったのか?」

「ごめんなさい。あの時は頭が真っ白になってて…その…。」

怒ったかな。車内は沈黙して雨音だけが聞こえる。

「じゃあもう一度…俺は赤崎の事が好きだ。付き合ってくれないか?」

真剣な眼差しで私を見つめてくる。どうしよう。胸がやばいくらいドキドキしている。返事…今度はちゃんと返事しなきゃ。でも上手く言葉が出てこない。

私は主任の胸に顔をぽふっと埋める。そして勇気を振り絞って『はい』と返事した。

「本当か!?今更冗談でしたって言ってももう遅いからな。」

主任は私を力強く抱きしめる。そして小さな声で『ありがとう』と言った。

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