溺愛なんてされるものじゃありません
いつも通り主任の部屋でゆっくりする…のだが、少しいつもと違う部分がある。

「…何で隣同士に座るんですか?」

いつもはテーブルを挟んで座っていた私達だけど、今日は何故か私の隣に主任は座ってきた。

「ダメか?」

「ダメじゃないですけど。」

「やっとこのテーブル越しの距離が縮まったんだ。少しでも近くに居たいじゃないか。」

そんな笑顔で言われたら…嬉しいじゃないですか。私は照れを隠すように目の前のビールを一口飲んだ。

「そういや前に女性は溺愛を好むって言ってたけど、赤崎もそうなのか?」

主任からの突然の質問に私は思わず口に含んだビールを吹き出しそうになる。溺愛についてはその場しのぎで言った気がするけど、まだ覚えていたのか。

「私は溺愛されなくても大丈夫ですので。全然普通でいいです。」

ニッコリしながら主任に伝えた。だってこんな格好良すぎる主任に溺愛なんてされたら心臓がいくつあっても足りないし。

「そうか。じゃあ溺愛の勉強はしなくてもいいんだな。」

主任はそう言うが私は思う。もしかして主任って実は溺愛体質なのでは、と。本人の自覚がないから天然的な溺愛を私はされている気がする。この主任からの溺愛に、私の心臓この先持つかな。

「赤崎、触れていい?」

「へ?急にど、どうしたんですか?」

何を言い出したかと思い、パッと主任の顔を見る。この笑顔はワインを飲んだ時と同じ色香漂う笑顔…。もしかして主任のスイッチが入っちゃった?

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