溺愛なんてされるものじゃありません

翌日、いつも通りに仕事へ行き定時に仕事を終わらせた。

「はぁ。」

軽く溜め息をつきコートを着て鞄を持つ。もうすぐ美織は元彼と会うのか。そう思うと俺は憂鬱になった。

「あれ？主任が溜め息なんて珍しいっすね。女性絡みですか？何なら酒でも飲みながら話聞きますよ。」

高成はエアーで酒を飲む仕草をしてニヤッとしている。

「今日は予定があるから酒はまた今度な。」

高成を軽くあしらって部署を出た。

「あっ待って下さいよ。俺も帰ります。」

高成も俺についてくる。なんか一緒に帰るような雰囲気だが…まぁいいか。

「そういえば最近、女子社員から主任の事めっちゃ聞かれるんですよ。雰囲気が変わったし絶対何かありましたよね。彼女っすか？」

「雰囲気が変わった？俺のか？」

エレベーターに乗り一階のボタンを押す。自分ではよく分からないが何か変わったのか、俺。

「はい。前はキラキラした王子様オーラと妖艶な雰囲気と御曹司というセレブオーラが全身から駄々漏れして近寄るだけで緊張しましたけど、最近はそのオーラがオブラートに包まれましたよね。だから主任と恋愛なんて恐れ多いと思っていた女子社員達も今ならイケるかもって玉の輿狙いに火がついたみたいですよ。」

エレベーターで一階に降りながら、高成が話をする。また意味不明のオーラの話か。そういえば美織もたまに悩殺フェロモンがとか妖艶オーラがとか訳わからない事言ってるな。

「そもそも俺は御曹司じゃないし、オーラとか意味不明だ。」

「本当に御曹司じゃないんですか？見た目と雰囲気は完璧な御曹司なのに。」

高成は疑いの眼差しで俺を見る。その時エレベーターが一階に到着し降りて会社を出ようとした。

ところが、何かに気づいた高成が急に俺をぐいっと引っ張り何故か柱の影に隠れた。