ボクソラ☆クロニクル
まずは朝ごはん
〇〇〇
空賊団ジャバウォックの母船ホワイト・アリス号は、アグロト州に隣接するキトリール州へ向けて風壁上空を航空していく。
キトリール州までの3日間。倉庫の隅が私に与えられた生活スペースになっている。
寝床代わりの麻袋からのろのろと起き出し、欠伸をひとつ。色んなことがあって混乱していたせいか、思っていたよりもゆっくり眠ることが出来た。
手鏡を覗き込みながら寝癖をくしでとかしていく。
ううん……髪を短くすると寝癖、直しにくいな。こんなにバッサリ切っちゃうんじゃなくて、ちょっとでも結べる長さに切れば良かった。
いくらとかしてもとかしても、ピョンとはねた右の毛先が直る気配は見えてこない。
「はあ……」
これはもう諦めるしかない。
寝癖との攻防戦に白旗を上げて立ち上がったその時、部屋の扉をノックする音が鼓膜を揺らした。
「は、はい!」
慌てて出るとそこにいたのは小柄な少年。
えっとこの子は確か、戦闘員の……。
「ピノくん、だよね」
昨晩、サミュエルさんからされた説明を思い出す。ジャバウォックにはレオンを中心にした6人の幹部がいて、組織はその6人を中心にして回ってるんだっけ。そしてこのピノくんは幹部の1人。
「馴れ馴れしい」
「ご、ごめんなさい」
大きな目にギロりと睨みつけられて思わず尻込みをする。
「…………朝ごはん。行くよ」
「わた……ボクも一緒に行って良いんですか?」
「ご飯は基本、出来る限りみんなで。ジャバウォックのルール。一時的にでもこの船に乗るなら、守って」
ピノくんの言葉に思わず目を見張った。
空賊なのに、ここではとても温かいルールが定められてるんだ。