ボクソラ☆クロニクル
「おいコラ、ピノ! それは俺のベーコンだ!」
「弱肉強食……取られる方が、悪い」
「なあカルロス! ペナルティ!」
「俺がペナルティを科すのはあくまで配る時までだ。そこから先は関与しない」
「だったら……」
「はぁ!? レオン! それ僕のなんだけど」
「はっはっはっ! 弱肉強食だルドルフ!」
ジャバウォックでの朝ごはんは、てんやわんやとあっちもこっちも大騒ぎ。
「申し訳ないですね、ここでは静かに食事も出来ないんです」
「いいえそんな」
溜息をこぼすイリスさんにそう言ってから、私はまた周囲の喧騒に視線を向けた。
「こんなふうに賑やかなご飯、初めてだから。ちょっと楽しいです。カルロスさんのご飯も美味しいし」
ずっとお父さんと二人暮らしだったから、こんなふうに皆でわいわい食卓を囲んだこともなかった。確かにちょっと騒がしいけど、こういうのも悪くないと思う。
「……」
……お父さんは、ちゃんとご飯食べられているのかな?
カルロスさんの作ったご飯は本当に美味しくて、だからこそその温かさに胸がきしんだ。
突然王都に連れていかれてしまったお父さん。酷い目にあわされていないと良いんだけど。
早く、出来るだけ早く王都に向かわなくちゃ。
お父さんに何があったのかは分からない。でも……。
「……ッ」
そんなことを考えていると、膝の上に置かれた拳に自然と力が篭もった。