ボクソラ☆クロニクル
レオンさんは今後の進路についてイリスさんと相談することがあるからと、私をランドリールームに残していなくなった。
現在、ホワイト・アリス号は私の故郷であるアグロト州と、隣のキトリール州の間にある風壁上空を航空している。風壁の上空域は気流が乱れることも多く必ずしも最短ルートで進んでいけるとは限らない。その都度風を読みながら、危険な箇所を避け、迂回をしながら進んでいくしかないためなかなか大変なようだ。
「さーて、私もやりますかぁ!」
シャツにシーツに下着にほつれたズボン。
それらを1つ1つ洗濯板でもみ洗いしていく。
時折、桶の中の水が赤黒く染まって鉄臭い臭いがしたりもするんだけど、ここは空賊船。そのくらいは多分、ご愛嬌なんだろう。
ほつれている箇所があるものは、後で裁縫セットを借りて直させてもらおう。お父さんとの二人暮らしで身についた最低限の生活スキルは、意外なところで大いに役に立っている。
「あ、服には全部名前が書いてあるんだ」
空賊の中では比較的少人数精鋭だと言ってはいたけれど、それでもジャバウォックは30人近い大所帯。誰のものだか分からなくならないように持ち物には記名しておくのもここのルールなのだろう。
「……よし!」
最初は小山が出来るほどあった洗濯物たちも1枚1枚根気強く片付けていけば、小一時間ほどで洗い終わった。
「やってやったぞ……!」
あの山を片付けた達成感はなかなかなものだ。
しかしいつまでも達成感に浸っていても仕方がない。洗った洗濯物を、今度は干しに行かなくては。
「よいしょっ!」
洗濯物の山をカゴにまとめて担ぎあげる。
途中で会った構成員の方に物干し場の場所を聞いて、甲板へと出た。
1枚1枚丁寧に洗い上げた洗濯物を、今度は丁寧に干していく。
「ちょ、ちょっと!」
洗濯物を干している最中に背後から声が上がった。