ボクソラ☆クロニクル
「わっ」
「おーっと」
大柄な男性にわざとらしく肩をぶつけられてしまった。その拍子に男性が持っていたビール瓶の中身が溢れて服にかかる。
「おいガキ。何してくれんだよ。ビールが零れちまったじゃねぇか」
「す、すみません」
「すみませんで済む問題か?」
そっちがぶつかって来たんじゃん!
と、抗議する勇気も生憎持ち合わせがない。
「弁償しろ、弁償!」
うう、どうしよう……。
ここから脱出する方法がない訳ではない。だけどあれは人前で見せちゃいけないってお父さんにも言われているんだ。
「ええっとぉ……」
ほとほと困り果てていた、その時のこと。
「そぉら!」
明るい声と共に何かが私を掴み上げていた男にぶつかった。
「ごふっ!!」
「わ!?」
私を掴み上げていた男は、背後からぶつかってきた何か突き飛ばされ勢いを殺すことも出来ずそのまま背後の壁に激突してしまう。
その衝撃で私は男の手から解放された。
「いっててて……って!?」
大柄な男にぶつかって来たのは、同じくらいの巨体を持つ空賊の男だった。
折り重なった巨体2つの隣に座り込み目を白黒させていると、目の前のテーブルの上に立っていた人影が目に入る。
「はっ! 甘いんだよ」
その人は高々とジョッキを突き上げながら、得意げな表情でこちらを見下ろしていた。彼が笑う度に燃えるような赤い頭髪がキラキラと光っている。
「この俺とヤりあいてぇんなら、もっと強くなることだな。オッサン」
そう言ってその人はニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。
「遊ぶんだったら、派手に遊ぼうぜぇ? その方がきっとキモチイイからよ」
床に転がされた私はどうしてなんだろう、ギラギラと光る好戦的な瞳からただ、目が離せなかった。