ボクソラ☆クロニクル
続く沈黙の中で思わず零れた疑問は、口にしてすぐにその場にそぐわないものだと理解させられた。私がこの船に乗ることを良しとしていない人が大勢いる中、幹部の中での反対派の代表格がルドルフさんであるはずなのに。馴れ馴れしく声なんか掛けてはまた煙たがられてしまう。
「……別に」
しかしそんな私の心境に反して、ルドルフさんはポツリと言葉をこぼした。
「僕はなんでも良かったんだよ。空賊でも何でも。僕がイチから手がけた船を飛ばせれば」
「イチからって、え……もしかしてこのホワイト・アリスって……」
「設計したの僕。さすがにこんだけでかい船、全部自分で作ったわけじゃないけど」
「す、すごいです!」
ジャバウォックの船員たちを乗せて空を飛ぶこの船を、私とほとんど年が変わらなさそうな男の子がイチから作っているなんて。とても信じられない。
感嘆の声を上げながらキョロキョロと部屋を見回していると、ルドルフさんは「別に」と呟いた。
「凄くないよ、このくらい。知識があれば余程の馬鹿でもない限り誰でも作れる」
「そんな……知識がある方なら船を作ることは出来るのかもしれないですけど。でも、この船はきっとルドルフさんにしか作れないんでしょう?」
「……!」
「それに、私――ボクは、いくら知識を詰め込んだところでとても船の設計なんて出来ないと思うし……」
この動力室1つ取っても何が起きているのかさっぱりだ。
これを自力で設計してしまうんだから、本当に感心させられる。
「すごいなぁ……」
船を作る。口で言うのは簡単だけど、きっとすごく沢山の知識とアイディアが必要なんだろう。彼がこの年でこんな船を作れるようになるまでにどれだけの努力があったのだろうか。