ボクソラ☆クロニクル
「のほほんって田舎で暮らしてきたボクには全然想像出来ないけど……誰にでも出来ることじゃないのは確かだよ」
「……知った口」
「ご、ごめんなさい。その通りです」
もそもそと、パイプの隙間から出てくるルドルフさん。
「ねえ、君はさ。魔風石ってなんだと思う?」
「魔風石ですか?」
風のエネルギーの塊である特別な鉱石。このホワイト・アリス号も、魔風石を燃やしたことで開放されるエネルギーによって空を飛んでいる。
飛行船のみならず一般家庭でも広く使用されている主要な動力源だ。この国は基本的に魔風石による風のエネルギーで動いている、風の王国なのである。
「なんでしょう? 動力源としか考えたことがないんですが」
「じゃあ、魔風石が取れる場所は?」
「えっと……風壁の暴風域内ですよね」
蜘蛛の巣のように張り巡らされた風壁によってこの国は各州ごとに分断されている。州から州への移動には飛行船が不可欠という特有の生活様式を生み出す原因になった風壁。
人が立入るには危険すぎるその場所で発生する魔風石が、この国を動かす貴重な動力となっているのだから、何となく皮肉なようにも感じてしまう。
「あの石は、利用の仕方こそ確立されているけれどあれ自体が何なのかは全く分かってないんだ。僕はそれが、すごくワクワクしてならない」
「ワクワク、ですか?」
魔風石でワクワクなんて考えたこともなかったけど、ルドルフさんの目はとてもキラキラしていた。まるでオモチャを前にした子どものようなキラキラした瞳。