ボクソラ☆クロニクル
「……ニーナ、君は」
と、気を抜いていると。
不意にカルロスから声を掛けられた。
「はい、なんでしょうか?」
「どうして王都へ?」
「……!」
これまで強く問われたこともなかったからハッキリと話してもいなかった、私が王都へ向かう理由。
「……父に会いに行くためです」
「親父さんに?」
「はい。今、父は王都にいるので」
「……親父さんは空賊か何かか?」
「え?」
どうしてそうなるのだろうか?
尋ねるとカルロスさんは戸棚から大きなフライパンを取り出しながら言った。
「いや、正規ルートの船が使えないとなるとそれくらいしか思い当たらなくてな。空賊の娘となれば、確かに少々ヴォーパル・ソードの連中に目を付けられる」
「いえ、父は空賊ではない……――と、思うんですけど……」
考えたこともなかった。
お父さんはお父さんでしかなかったから。
何者かなんて疑問にも思わなかった。
「ボクが知る父は、単なる村医者でした。穏やかでとても静かに笑う人で……村の教会で子供たちに良く、読み書きや計算、国の歴史なんかを教えにも行っていました。その手伝いに行っていたから、私も良く教会に出入りしていたんです」
「なるほど」
「……良く考えたら、ボクは自分の父親が何者なのかちゃんと知っているわけではなかったみたいです。でも、だからこそ。王都に行かなくちゃいけないんです。お父さんに、ちゃんと会って話がしたい」
そうか、とカルロスさんは低い低いベルベットヴォイスをこぼす。