ボクソラ☆クロニクル
「死ね、ガキ!」
「――!」
しかし逃げ道を見つける前にヴォーパル・ソードの隊員ががこちらに剣を振り上げてきた。この男装のせいで私も空賊の1人だと認識されてしまったのだろう。
攻撃を避けることも出来ずにギュッと目を瞑った、その次の瞬間。
――……ザシュッ!!
暗がりの中、聞こえてきたのは刃が肉を斬る音だった。
「大丈夫かよ、チビ助」
レオンさんが私の肩を抱き寄せると同時に目の前の隊員を一太刀で切り伏せたのである。
「レオン、ありが……――後ろッ!」
「戦いの最中に背を向けるとは良い度胸だな、レオナルド!」
「しま……ッ!」
レオンさんの背後から白刃を振り上げるナサエルの姿が目に飛び込んでくる。
レオンさんは咄嗟に私を自分の身体の後ろに隠した。
私のせいだ、私を守ろうとしたせいで。
このままじゃ彼が斬られてしまう……!
『良いかい、ニーナ。この力はけして人前で使ってはいけない。人に明かしてはいけませんよ。君が……』
窮地の場面で聞こえてきたのは、在りし日のお父さんの声だった。
分かってる。これは使っちゃダメな力だ。
『君が、自由に生きていたいのなら……』
でもレオンさんは出会ったばかりの私を守ろうしてくれた。そのせいで彼が傷つくのは……いや!
ごめん、お父さん……!!
ギュッと目を閉じて覚悟を決める。私は指を組むと大きな声で叫んだ。
「来て!!」