ボクソラ☆クロニクル
第1章 キトリール州へ
ジャバウォック
第1章
【キトリール州へ】
「まさかあんな場末の酒場でヴォーパル・ソードに出くわすなんてな」
飛行船は無事に出航し、地上から遠く空の上に浮かび上がった。
先程までのピンチを何とも思っていないのか、甲板でレオンさんはそう言いながらケラケラと豪快に笑っている。
「全く……無事に出航出来たから良かったものの」
笑うレオンさんとは対照的に、カルロスさんは渋い表情で頭を抑えていた。何となく普段から彼が苦労させられていることが伺える。
「もうちょっとあの酒場で遊んできたかったんだけどなぁ。今ヴォーパル・ソードとヤり合うのは得策じゃねぇからな」
「とにかく、無事で何よりよ。この州にヴォーパル・ソードのリーダーまで来てるって聞いた時は肝が冷えたわ。全く何なのかしら。普段はトップがわざわざこんなところに来ることないんだけれどね」
そう言ったのは背の高い――男性……だよね?
女性のような喋り口調の男の人。
「それにしてもうちの船長は危なかったしいったらありゃしないわ。フォローするこっちの身にもなってほしいわね。……ところで、さっきから気になってたんだけど」
「!」
女性的な彼の視線が、レオンさんとカルロスさんの後ろにいた私に向けられる。
「そこのかわい子ちゃんは、どなたかしら?」
「ああ、コイツは……」
と、口を開いたレオンさんだったけど。
「誰だ?」
そうだよね。私まだ名前すら名乗ってないもんね。