騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
まだ陽の沈まないうちから、ゆっくりとふたりで晩餐を楽しんだ。それから湯浴みを済ませたエルシーが夫婦の寝室で待っていると、ほどなくしてアーネストが現れ、ベッドに腰かけていた妻の横に座った。
湯上がりの爽やかな香りがエルシーの鼻腔をくすぐった瞬間には、もうすでにアーネストの腕の中に閉じ込められている。
「さっきも話したが、しばらく留守にする。家を頼む」
国王の花嫁を出迎えるため第一騎士団から選抜された騎士師団を率いるのは、アーネストではなく、副団長のグレッグだ。国王が王都にいる限り、騎士団長のアーネストはそのそばを離れられない。しかし、道中のささいな伝令も受け取り可能にするため、王宮の騎士団棟で待機しておく必要があるのだ。
「承知いたしております。こちらのことは心配なさらないでください」
エルシーは微笑みながら夫を見上げた。
結婚してからこれまで、アーネストと離れて過ごした夜は一度もない。寂しい気持ちはもちろんあるが、自分は騎士団長の妻。しっかりとした心構えで夫を見送らなければ。
言葉に出せない分、エルシーはアーネストの逞しい胸板に頬を擦り寄せた。すると、自分を抱きしめる腕にさらに力が加わった。夫も同じ気持ちでいることがわかり、エルシーの口もとは喜びに綻ぶ。
「しばらく君に触れられなくなると思うと、耐え難いものがある」
そう呟くと、アーネストはエルシーの頬に手を添えた。ゆっくり上向かせると、妻の美しいエメラルドグリーンの瞳を見つめる。
その眼差しは、毎夜幾度となく自分の心と身体に刻まれた熱を呼び覚まし、エルシーは羞恥から静かに目を閉じた。
アーネストは妻の唇を自分のそれで塞ぐと、そのままベッドにゆっくりと押し倒した。シーツの上に艶やかな金髪が広がる。
いつもに増して優しくアーネストに抱かれ、エルシーは夜通し、甘い熱に浮かされ続けた。