【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍

 アーネストがそのままの体勢を保っていると、やがてヴェールの向こうから「出迎えご苦労様です」とか細い声が聞こえてきた。

 予定では、このあとティアナ王女は新しく用意された部屋に案内されることになっている。アーネストは、あらかじめ決めておいた王女の護衛騎士数人に目配せをした。一番近くにいた彼らは、背筋を伸ばして前に出ると、入城する王女に付き従っていった。

「グレッグ」

 アーネストは副団長のもとへと足を進める。

「ティアナ王女は、どんなお方だ?」

 国境から王都まで四日ほどの行程だ。途中、数回宿を取っているはずだから、王女と接する時間もあっただろう。

「ああ、それが王女様はあまり表に出てこなくてな。俺たちの前に現れたとしても、いつもあの格好だったよ。最初はびっくりしたけど、だんだん慣れてくるから不思議だな。でも、すぐに馬車に乗り込んでしまわれるから、俺たちも王女様の容姿がよくわからない」

「そうか……」

「だが、厄介なのは……」

 グレッグが声を潜めた。

「王女様つきの、あの侍女だ。名前はパメラだったな。彼女、いつも王女のそばに張り付いて、あの怖い顔で俺たちの様子をうかがってる。あれこそ真の護衛だよ」

「それほど忠誠心が厚いということじゃないのか?」

「よく言えばそうだが、もうちょっと態度ってものがあるだろ。あれじゃ、王宮内の気位の高い侍女たちとも早々にもめて、結局王女様は孤立してしまうぞ」

 グレッグは肩をすくめた。

 アーネストは彼ほど深く心配していないにしても、ティアナ王女が早くこの城の環境に慣れてくれることを願った。

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