【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
国王ジェラルドとの面会の許可はすぐに下りた。ティアナ王女の方から出向いてくるなど、ジェラルドも予想していなかったに違いない。
以前、通された私的な謁見室で、エルシー、アーネスト、ディアン、パメラが待っていると、扉からジェラルドが颯爽と現れた。四人はすぐに姿勢を低くし頭を垂れ、礼の形を取る。
「そんなにかしこまらなくていい。楽にしてくれ。……ティアナ王女、あなたから来てくれるとは思ってもいなかった。セルウィン公爵夫人、ご苦労だった」
ジェラルドは従者を下がらせると、穏やかな微笑みを浮かべて、まずディアンに椅子をすすめた。この笑顔が数分後には怒りの形相に変わる未来を予測し、エルシーの背中には冷たい汗が伝い落ちる。しかし、ジェラルドがここで剣を抜いても、俊敏なアーネストが止めに入るだろう。それだけがエルシーの心の支えだ。
ディアンは着席せず、ジェラルドのそばまで歩み寄ると、床に片膝をついた。残る三人も同様の体勢になるのを見たジェラルドは、怪訝そうに眉根を寄せた。
「陛下に申し上げたき儀がございます」
ディアンが顔を伏せたまま口を開く。数日前の初謁見時のような細い声ではなく、しっかりとした声質だ。
ジェラルドもただならぬ空気を感じたのか、しばらく無言だったが、やがて長椅子に悠然と腰掛けた。
「許す。申してみよ」
ディアンから全てを聞き終えたジェラルドは、小さく息を吐き出したまま、再び沈黙してしまった。彼が驚きのあまり声も出せないのか、それとも怒りを必死で抑えているのか、エルシーには見当もつかず、ただただ緊張と恐れの中でじっとしているほかない。