騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
五章
ジェラルドがローランザムを訪れるにあたって、各地の騎士団から精鋭部隊が集結した。彼らの指揮を執るのはもちろんアーネストである。国王不在を案ずる声も上がったが、その間は国の一切を宰相が取り仕切ることになった。彼はジェラルドの伯父で、先代から王に仕えてきた信頼のおける人物である。
パメラもディアンについて国に帰ることになった。三人は別れを惜しむように、手を取り合った。
アーネストが出立して一ヵ月が過ぎた頃。まだ彼からは知らせがない。
急きょエルシーは王太后アンドレアに呼び出され、王城を訪ねた。まさか、アーネストたちの身に何か起きたのではないか、と気が気ではない。
「実はね、ジェラルドたちが近々戻ってくるそうなの。今朝、いち早く伝令が届いたの」
優雅なドレスに身を包み、謁見室に現れたアンドレアの開口一番の言葉に、エルシーは目を見開く。
「もちろん、あなたの夫もね。向こうでは特に問題もなく皆、無事だそうよ。まだ正式な通達ではないのだけれど、いち早くあなたには知らせたくてね」
(アーネスト様が……お戻りになる!)
感極まって手が震えるエルシーに、アンドレアは優しく微笑みかける。
「ティアナ王女も、祖国の空気を吸って少しは楽になったんじゃないかしら。体調もすっかりよくなって、一緒に戻って来られるそうよ。帰ってきたら、婚礼の準備で忙しくなるわね」
ローランザムの地で、ジェラルドは無事に本物の王女と出会えたらしい。それに、騎士団も無事ということは、カーディフト国とそれほど大きな衝突も起きなかったようだ。