騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
まだ近くにいるのかもしれない。
エルシーは、ティアナの部屋に戻ると、意識を集中させて念じてみた。
(お願い、王女様がいなくなって大変なの。どうか、行き先を教えて)
手を組み合わせ、ぎゅっと目を瞑る。
(いつも避けてきたくせに困った時だけ〝あなたたち〟に頼ろうとする私なんて、助けたくないのはわかってる。でも、王女様は何かに悲しんでるみたいなの。私のことは助けてくれなくていい。でも、あの方をどうしても探したいの。命を懸けて異国にやってきたディアン様やパメラさんのためにも)
エルシーの願いが通じたのか、小さな反応があった。
《ソト、シタ》
導かれるように、エルシーは廊下に出ると階を下りる。途中見張りの護衛には、「自分も捜索中だ」と告げた。
館の外へ出ると、森の中に捜索隊の赤々とした松明の灯りが散らばっている。
《シタ》
意味がわからないまま、仕方なくエルシーは灯りのほとんどない方へと進んだ。アーネストに知らせることも頭をよぎったが、どこにいるのかわからないし、他に意識を飛ばすことで〝声〟を聞きのがしてしまうことは、今はなんとしても避けたかった。
辺りに注意を払いながら、ゆっくりと進む。すると、足元がぐらりと揺らいだ。慌てて踏み留まろうとしたが、もう片方の足も取られてしまう。
(まさか、崖……!)
気づいた時には遅かった。咄嗟の出来事に悲鳴も上げられないまま、エルシーの身体は落ちていく。