騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
「も、申し訳ありません……!」

 エルシーは慌てて頭を垂れた。仕事中に私情が表に出てしまうなんて、王女つき侍女として失格だ。

 するとグローリアはそっと扉を閉めて、近づいてきた。部屋にはふたりきり。

 グローリアは表情を和らげると、エルシーの前に立つ。

「ふふ、今のどう? ちょっと未来の王妃っぽかった?」

「えっ……え?」

「それより。あなたのお母様の具合、そんなによろしくないの……?」

「いいえ、母は大丈夫です。ご心配をおかけして申し訳ありません」

「それは良かったわ。では、エルシーの悩みの種は別のところにあるのね? わたくしでよければ、話を聞くわよ?」

「いえ、そんな、グローリア様のお耳に入れるようなことでは……」

「わたくしでは頼りないのはわかってるけど、これまでエルシーには世話になってばかりだったもの。嫁ぐ前に何かお返しをしたいのよ。話すだけでも気分が楽になるかもしれないでしょ。……だってエルシーは、わたくしの大事なお友達で、お姉様だもの」

「いいえ、そんなお言葉、勿体なく……」

 エルシーは恐縮してますます頭を下げたが、下からグローリアが顔を覗きこんできた。

「エルシーが顔を上げてくれないなら、わたくしもずっとこのままよ。首が痛くなっちゃう」

 少し口を尖らせた王女の愛らしさに、エルシーの頬がついに緩んだ。

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