騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
輿入れに追従しダルタンド国の王宮に入るのは、グローリアの乳母のほかに、この国に待つ者のいない侍女がふたり。エルシーはグローリア王女を内心妹のように思い、付き従いたいほど大好きだったが、身体の弱い母と、成人前の弟を祖国に置いていくことはできない。
もちろん、グローリアもそれは承知しているが、寂しさから、つい幼子のように本音が口をついて出てきてしまうのだろう。
「これからはダルタンドの王太子様がグローリア様のお手を引いてくださいますよ」
離愁の念を抑え、エルシーは微笑みかける。
「そうね、アレン様はとてもお優しい方だと聞くから」
アレンとはダルタンドの王太子の名前だ。
「変なこと言ってごめんなさい。わたくし、エルシーの前ではつい弱気になってしまうの。幻滅しないでね」
「私などに謝るなと、滅相もごさいません。私はどんなグローリア様もお慕いしておりますから」
「ふふ、ありがとう。……ねえ、エルシーはわたくしが嫁いだら、お母様の侍女に戻るの?」
「はい」
「侍女の中には、これを機に宮仕えを辞めて結婚する者もいるわ。エルシーにはそんな人はいないの?」
「行き遅れの身としては、実に耳が痛いです」
エルシーは苦笑した。この国の女性の結婚適齢期が十七から十九歳なのに対し、エルシーは二十歳だ。たが、彼女はそんな世間の目も意に介さず、王宮侍女として生きていければ満足だった。
「あら、そんなの関係ないわ。誰が決めたのかは知らないけれど何歳になっても結婚は許されているものよ。お兄様は、二十五歳になってやっとお妃をお迎えになるのよ?」
「男性と女性では認識が違うのです。ましてや陛下は一国の王でいらっしゃいますので、王妃となられる女性の選定には時間がかかって当然でこざいます」
もちろん、グローリアもそれは承知しているが、寂しさから、つい幼子のように本音が口をついて出てきてしまうのだろう。
「これからはダルタンドの王太子様がグローリア様のお手を引いてくださいますよ」
離愁の念を抑え、エルシーは微笑みかける。
「そうね、アレン様はとてもお優しい方だと聞くから」
アレンとはダルタンドの王太子の名前だ。
「変なこと言ってごめんなさい。わたくし、エルシーの前ではつい弱気になってしまうの。幻滅しないでね」
「私などに謝るなと、滅相もごさいません。私はどんなグローリア様もお慕いしておりますから」
「ふふ、ありがとう。……ねえ、エルシーはわたくしが嫁いだら、お母様の侍女に戻るの?」
「はい」
「侍女の中には、これを機に宮仕えを辞めて結婚する者もいるわ。エルシーにはそんな人はいないの?」
「行き遅れの身としては、実に耳が痛いです」
エルシーは苦笑した。この国の女性の結婚適齢期が十七から十九歳なのに対し、エルシーは二十歳だ。たが、彼女はそんな世間の目も意に介さず、王宮侍女として生きていければ満足だった。
「あら、そんなの関係ないわ。誰が決めたのかは知らないけれど何歳になっても結婚は許されているものよ。お兄様は、二十五歳になってやっとお妃をお迎えになるのよ?」
「男性と女性では認識が違うのです。ましてや陛下は一国の王でいらっしゃいますので、王妃となられる女性の選定には時間がかかって当然でこざいます」