騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
「わかりました。ですからグローリア様もどうかお顔をお戻しくださいますよう。……そうですね、ではお話だけさせていただきます。……実は第一騎士団に在籍中のとあるお方に、とても世話になったのですが、諸事情からなかなかお礼に伺えないのです」

 エルシーはアーネストの名を出さず、かなりざっくりと説明を終えた。これでグローリアが引いてくれると思っていた。

 しかし。

「まあ、そうなの。大事なことは早めに伝えないと。一緒にいらっしゃい」

 グローリアはエルシーの手を掴むと扉を開け、引っ張っていく。

「え、あの、どちらへ……?」

 戸惑いを隠せないまま、あっという間に廊下に連れ出されたエルシーの手をグローリアは離そうとしない。

「どこって、騎士団の営舎に決まってるでしょう」

「えっ!?」

「騎士団長にその者を呼び出してもらえばいいわ。仕事とは関係のない用事だから、厳しい団長に追い返されてしまうんじゃないか、なんて心配は無用よ。大丈夫、きっと協力してくれるわ、だってわたくしのお願いですもの。問題はいつまでも引きずらずに早めに解決することが大事なのよ、ってお母様もよくおっしゃっているし。これは命令よ、エルシー」

 エルシーから悩みを打ち明けられたことが、思いのほか嬉しかったようで、グローリアはひとり張り切っている。

「で、ですが、グローリア様……っ」

(とあるお方、というのが、実はその厳しい騎士団長様なんですよぉぉ……!)

 エルシーの心の叫びは、グローリアに届くはずもなかった。

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