【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
「父が出発する日、危機を知らせる声が聞こえました。私はそれを父に伝えましたが、当然聞き入れてもらえず、父はそのまま馬車に乗り……行く先で事故に遭い亡くなりました。それ以降、全く声は聞こえなくなったんですが、なぜか最近また聞こえるようになって……そして今日、また同じ声が聞こえたんです。私は、父のことを思い出しました。どうしても、後悔したくなかった。だから、王女殿下の出発を阻止しました。馬車に不備があったとのことですが、私にはその原因まではわかりませんでした。行き先で、何かあった可能性もありますし……」
そこまで一気に話し終えてから、エルシーはアーネストの顔を窺った。彼は相変わらず表情ひとつ変えず、エルシーを見ている。
(えっと、この表情は、信じてもらえてない?それとも気味悪がられてる……?)
答えを見出だせないエルシーは、深く頭を下げるほかなかった。
「この力のこと、黙っていて申し訳ありませんでした。でも、アーネスト様を騙すつもりはなかったんです。再び聞こえるようになったのは、婚約成立したあとですし、ましてや、この力は完全に自分の中から消えてしまったと思っていましたから……。驚かれるのも無理ないと思います」
きっとこれで婚約破棄されてしまうだろう。母やルークにはどう説明すればいいのか。
失望する家族の顔を思い浮かべ、エルシーの心に暗雲が立ち込める。
しかし、アーネストは静かにかぶりを振った。
「いや、驚かない。知っていたから」
そこまで一気に話し終えてから、エルシーはアーネストの顔を窺った。彼は相変わらず表情ひとつ変えず、エルシーを見ている。
(えっと、この表情は、信じてもらえてない?それとも気味悪がられてる……?)
答えを見出だせないエルシーは、深く頭を下げるほかなかった。
「この力のこと、黙っていて申し訳ありませんでした。でも、アーネスト様を騙すつもりはなかったんです。再び聞こえるようになったのは、婚約成立したあとですし、ましてや、この力は完全に自分の中から消えてしまったと思っていましたから……。驚かれるのも無理ないと思います」
きっとこれで婚約破棄されてしまうだろう。母やルークにはどう説明すればいいのか。
失望する家族の顔を思い浮かべ、エルシーの心に暗雲が立ち込める。
しかし、アーネストは静かにかぶりを振った。
「いや、驚かない。知っていたから」