【電子書籍化】騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
その間に弟が生まれ、ごく普通の貴族令嬢として不自由なく穏やかな日々を送っていたエルシーだったが、それも長くは続かなかった。
父が仕事仲間たちと立ち上げた事業に失敗し、彼らは父ひとりに責任と借金を押し付け、行方をくらませてしまったのだ。ウェントワース家の財産は、たちまち多額の借金返済に充てられ、以降エルシーたちは質素な生活を余儀なくされた。
責任感の強かった父は、自分のせいで家族に不憫な思いをさせている現実に耐えられなかったのだろう。一攫千金を狙って新しい事業に目をつけ投資をしたが、採算が取れないとわかると、また他に目を向け……と、何度も繰り返すたびにウェントワース家の財政実情は当然のごとく苦しくなっていった。使用人もひとり、またひとりと日毎に減っていき、高価な調度品や芸術品、宝石類も次々に売りに出され消えていった。
父には元から事業の才はなかったのだと、今のエルシーには理解できる。もし自分が大人であったのなら、それを父に進言し、我が家が没落していくのを止められたかもしれないと、今さらどうしようもない後悔ばかりが募ってく。
父が仕事仲間たちと立ち上げた事業に失敗し、彼らは父ひとりに責任と借金を押し付け、行方をくらませてしまったのだ。ウェントワース家の財産は、たちまち多額の借金返済に充てられ、以降エルシーたちは質素な生活を余儀なくされた。
責任感の強かった父は、自分のせいで家族に不憫な思いをさせている現実に耐えられなかったのだろう。一攫千金を狙って新しい事業に目をつけ投資をしたが、採算が取れないとわかると、また他に目を向け……と、何度も繰り返すたびにウェントワース家の財政実情は当然のごとく苦しくなっていった。使用人もひとり、またひとりと日毎に減っていき、高価な調度品や芸術品、宝石類も次々に売りに出され消えていった。
父には元から事業の才はなかったのだと、今のエルシーには理解できる。もし自分が大人であったのなら、それを父に進言し、我が家が没落していくのを止められたかもしれないと、今さらどうしようもない後悔ばかりが募ってく。