騎士団長と新妻侍女のひそかな活躍
エルシーはしばし逡巡した。確かに、オーモンド氏が引き継いでくれなければ、施設の子供たちは他所へ送られるか、最悪の場合は浮浪者になっていた可能性もあった。いくら人手に渡り、今は無関係だといっても、父の始めたことをこれまで守り続けてくれたオーモンド親子には頭が下がる思いだ。ウェントワース家の長子として、直々に会ってちゃんとお礼を伝えたいという感情もわいてくる。
(でも引っ掛かるのは……どうしてこんなにヘクターの思い入れが強いのか、ということだわ)
ヘクターに関しては、施設のこともオーモンド親子の事情も全くと言っていいほどの部外者だ。昔から付き合いがあるならまだしも、まだヴィンスと出会ってから日も浅く、ヘクターがそこまで肩入れする道理が見当たらない。
「ヘクター……さっき、あとがない、って言ってたけど、そのヴィンスという人から得するような何かを持ち掛けられてるんじゃないの?」
エルシーの質問に、ヘクターが動揺したように肩を揺らす。鎌をかけたつもりだったのだがその分かりやすい反応を見て、エルシーはため息をついた。
「そう、その通りだよ。……実はヴィンスが手掛ける事業に一枚かませてもらおうと申し出たんだが、なんせ僕には実績がない。でも、彼が言うんだ。『父の願いを叶えてくれたら、考えてもいい』って」
「つまり、私達をだしに使おうって魂胆ね」
「ごめん、君には悪いと思ってるよ。でも、誰も相手にしてくれない中、彼だけがとりあえず僕の話を聞いてくれたんだ。もし成功すれば、世間を見返せるし、親からの勘当を解くきっかけにもなる。難しいことは言われていない、ただ面会するだけだ。頼む、代わりに君の頼みは何でも聞くよ」
ヘクターは、もうダメだと観念したのか、床に両膝をつくと深く頭を垂れた。
(でも引っ掛かるのは……どうしてこんなにヘクターの思い入れが強いのか、ということだわ)
ヘクターに関しては、施設のこともオーモンド親子の事情も全くと言っていいほどの部外者だ。昔から付き合いがあるならまだしも、まだヴィンスと出会ってから日も浅く、ヘクターがそこまで肩入れする道理が見当たらない。
「ヘクター……さっき、あとがない、って言ってたけど、そのヴィンスという人から得するような何かを持ち掛けられてるんじゃないの?」
エルシーの質問に、ヘクターが動揺したように肩を揺らす。鎌をかけたつもりだったのだがその分かりやすい反応を見て、エルシーはため息をついた。
「そう、その通りだよ。……実はヴィンスが手掛ける事業に一枚かませてもらおうと申し出たんだが、なんせ僕には実績がない。でも、彼が言うんだ。『父の願いを叶えてくれたら、考えてもいい』って」
「つまり、私達をだしに使おうって魂胆ね」
「ごめん、君には悪いと思ってるよ。でも、誰も相手にしてくれない中、彼だけがとりあえず僕の話を聞いてくれたんだ。もし成功すれば、世間を見返せるし、親からの勘当を解くきっかけにもなる。難しいことは言われていない、ただ面会するだけだ。頼む、代わりに君の頼みは何でも聞くよ」
ヘクターは、もうダメだと観念したのか、床に両膝をつくと深く頭を垂れた。