鳥居の道標
迷子
「うわ、なんじゃこやつは」
「なんじゃ、騒がしい」
「まぁた、迷い込んで来たみたいじゃ。しかも今度は若い女子じゃ」
「またか! もうそろそろこの山も、呪いか何かの悪い噂が出回るぞ」
耳元で、変わった声がぼそぼそと会話していた。やたら「じゃ」という言葉の多さに、少し耳が痒くなる。
私はゆっくりと重たい瞼をこじ開けた。
「全く、困ったものじゃ。標様はどこに行かれた?」
「馬鹿者。標様が行かれる場所など、あやかし商店街以外なかろう」
「ああ全く、あの方はこういう肝心な時に……」
目の前の生き物の言葉が途切れる。
それもそのはず。薄暗い中、私とその二体はバッチリ視線を交えていたのだから……。