鳥居の道標
「ああもう、まぁたこんなに買われたんですか」
「そうだ! 良いだろう!」
何の気なしに狐たちと会話をする男。子供のように目を輝かせながら、二カッと笑った時、イヤリングが『チリン』と音を立てた。
「あ、それ……」
「ん?」
やっと音の正体がわかった私は、思わず指をさして声を出してしまった。
ようやく私の存在に気付いたらしい謎の男と視線が絡まる。吸い込まれそうなほど綺麗な瞳に、私はしばらく魅了されていた。
「あ、迷子?」
「え?」
男の人はそう言って、耳についた風鈴にそっと触れる。
「これ、うるさかっただろう? ごめんな」
先ほどまで小学生かと思えた顔つきは一瞬にして掻き消され、まるで兄のような優しい表情で苦笑した。
それにしても、どうして私がその音を探してきたことが分かったのだろう。