鳥居の道標

「ええー、ワシはもう人間の世話はこりごりじゃ……」

「ワシもじゃ。標様、早うこやつを返してくだされ」

 狐たちはあからさまに嫌な顔をして男に頼む。

 いや、世話って何のこと? 

それに、冷静になってみれば、何なのこの状況。狐は喋るし、変な人はいるし。

いつから私は夢を見ているのだろう。寝た覚えなんてないのに。

「うーん。まあ、いいじゃないか。それよりそこの人間のお姉さん! この服どう⁉」

 全く考える気がなさそうなのは見ていてわかる。

くるくると表情を変えながら、紙袋に手を突っ込み、ポイポイと服を引っ張り出す姿を横目に、狐たちは呆れ顔でため息をついていた。

 男の人が紙袋から出すのは、全て洋服。でも、それらはすべて変わったものばかり。

 ピエロが着ていそうな、奇抜な色の服。

紫色のスパンコールで埋め尽くされたジャージ。

大きくて赤い謎の花柄が散りばめられた、青ベースのズボン。

その他もろもろ、一体どこで買ってきたのだろうという服が、紙袋五つ分ほどあった。

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