鳥居の道標

「ああもう、言わんこっちゃない」

 そっくり白狐の一匹が、疲れた顔で私に言った。
 どうしよう。私は完全に神様の地雷を踏んでしまったらしい。

「あ、じゃあ、お詫びにその最先端を教えてあげますよ」

 正直、ファッションセンスはそれほどないし、流行りの服も知らないが、神様よりはましなはずだ。

 予想通り、神様は勢いよくこちらを向き、目を輝かせて話題に食いついた。

「本当か! 人間の最先端でかっこいい服を選んでくれるのか!」

「あ……まあ、はい。お店がどこにあるのかわかりませんが……」

「来い! 行きつけの商店街にたくさん店があるぞ!」

 私は神様に腕を引かれ、鳥居をくぐって外に出た。今度はちゃんと、意識はある。


神様と一緒だから、空でも飛べるのかと思ったけれど、普通の人と何ら変わらず石段を駆け上った。

違うとすれば、この急な石段を走って駆け上っても、疲れないことだろう。

 後ろを振り向けば、白狐たちがせっせと追いかけてきていた。

「やっぱり犬みたい」

 神様に腕を引かれているという事実に、触れた部分が少しだけ熱く感じる。


 その背中も、どこか安心できて、さっきの出来事が記憶から削除されたのではと思うほど、この人になら何を任せても大丈夫な気がしていた。
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