かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 その後はとんとん拍子に話が進み、大学を卒業してすぐの今日。将生との結婚式を迎えたんだ。

***

 えっと……どうしたらいいんだろう、これ。

 誓いのキスをして、かれこれ三十秒は経つ。唇が重なった瞬間は歓声が上がったものの、今はざわざわと騒がしい。
 それもそのはず。なかなか将生がキスをやめてくれないのだから。

 たしかに式場の人に写真を撮る人もいるから、少し長い時間キスをしてくださいとは言われたけれど、いくらなんでも長すぎじゃない?

 緊張と戸惑いからうまく呼吸ができず、息苦しさを感じはじめた時、やっと唇が離れた。

 ホッとしたのも束の間、目を開けるといまだに将生の整った顔がすぐ間近にあって、息を呑む。

 すると将生はコツンと私の額に自分の額を押し当てると、静まり返る教会内で信じられないことを言った。

「なにがあっても、小毬を幸せにするから」

「――え」

 将生が私に言ったとは思えない言葉は、すぐに沸き起こった歓声によってかき消された。

 えっと……さっきのは聞き間違いじゃないよね? 本当に将生が私に言ったの?

 なにも言えず、自分でも驚くほど胸が早鐘を打っている。すると将生はゆっくりと離れると、いきなり私の身体を抱き上げた。
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