かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
『自分の中に眠っていた感情』
 遠くから聞こえたドアを閉める音。

「んっ……」

 目が覚めると将生の姿はなかった。

「嘘、もう行ったの?」

 ベッドから起き上り寝室を出て、彼の姿を探すものの見あたらない。時刻は六時を過ぎたばかりだった。

 キッチンへ向かうとコーヒーの芳しい香りが漂っていて、テーブルには私の分の朝食が用意されていた。

「もう、いいって言ったのに……」

 家を出るのが早いのに、私の分まで朝食を用意してくれた将生に、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 旅行の次の日から、将生は仕事に出ている。なんでもトラブルが起こったらしく、しばらく忙しくなると言っていた。

 言葉通り将生は、朝早くに家を出て、夜遅くに帰ってくる。だから旅行から戻ってきてから、まともに顔を見て話をしていない。

「私も早く準備して行こう」

 GW明け。今日からまたいつもの毎日がはじまる。

 将生が作ってくれた朝食を食べながらテレビを見ていると、ちょうど連休中の鎌倉の様子が流れた。それを見ているとふたりで行った旅行のことを思い出す。
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