かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 野沢君がどう思うかわからない。それに誠司君やお義父さんには、素性を隠して旧姓で働くと言ったのに、あっさりと同僚にばれてしまい、申し訳ないけれど……。

 興味津々で私の答えを待つ野沢君を見る。

 今日まで他言されていないし、なにより野沢君なら話しても大丈夫だよね。

 そう判断し、野沢君に打ち明けた。

「……というわけなんです」

 私の話を最後まで聞いた野沢君は放心状態。そうだよね、社長と副社長が義理の父と兄だと聞いたら、誰だって驚くよね。

 それを目の当たりにして苦笑いしてしまう。

「いや、ごめん、びっくりして……。まさかそういう事情で結婚を隠していたとは想像できなかったから。あ、大丈夫! 荻原が実力で秘書課に配属されたってちゃんとわかってるからな!」

 そう言ってくれた野沢君に、安心して肩の力が抜けた。

 正直、そう思われそうで怖かった。入社した経緯も配属された理由も〝コネ〟ではないかと。

「ばれたのが野沢君でよかった」

「えっ?」

「だって今日まで誰にも言わないでくれたでしょ? 事情を説明しても、引かないでくれた。正直、将生……あ、旦那さんとのことを説明すると、離れていく友達もいたから不安だったの」
< 168 / 265 >

この作品をシェア

pagetop