かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 学生時代とは違うとわかっていても、やっぱり昔のトラウマが残っているのかもしれない。

 将生とのことを誰かに話すのは、結婚した今も少し怖い。相手が野沢君だから余計だったのかも。だって野沢君のような存在、失いたくないもの。

「だからありがとう。……これからも変わらずに接してくれたら嬉しい」

「……っ! そんなの当たり前だろ!?」

 いつになく声を荒らげて立ち上がった野沢君に、周囲の視線が一気に集まる。もちろん私も。
 それに気づいた野沢君は急いで腰を下ろすものの、真剣な面持ちで私を見据えた。

「話を聞いたからって避けるわけないじゃん。そりゃまだびっくりしているけど、荻原は荻原だ。これからも同期としてガンガン声をかけるからな」

「野沢君……」

 嬉しくて胸がいっぱいになる。それと同時に中学時代、由良に将生とのことを打ち明けたことを思い出した。

 由良も野沢君と同じように『小毬は小毬じゃん!』って言ってくれたんだよね。そして今も変わらずそばにいてくれる大切な存在となった。

 野沢君とも同期として、これからも良い関係を築いていけたらいいな。

「ありがとう、じゃあ私もたくさん話しかけるね!」

 嬉しさを噛みしめて言うと、野沢君はどこか照れくさそうに「おう」と言いながら、残っていたコーヒーを飲み干した。
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