かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
【その代わり明日は早く帰れるから、おいしいものを食べに行こう。小毬に話したいことがあるんだ】

「将生……」

 将生のメッセージを見たら、なぜか目頭が熱くなった。

 どうしてだろう、なんてことないメッセージなのに落ち込んでいたからかな? たまらなく将生に会いたい。

 涙が込み上げ、このままじゃ電車に乗れない。

 たしかこの駅に、百貨店があったよね? ちょっと落ち着くまでブラブラしよう。

 ホームを後にして改札口へ向かっていると、将生に似た人を見つけ目を疑った。

「え……将生?」

 ううん、そんなわけないよね。だって仕事中のはずだし……。でもあのスーツは将生のもの。髪型も似ていたし……。

 気になって後を追うと、隣に女性がいることに気づいた。ピタリと隣に寄り添い、なにやら楽しそうに話をしているのが窺える。

 将生じゃないよね。……人違いであってほしい。今は会社にいるはず。

 そう願いながら不安は拭えず、徐々に距離を縮めていく。

 人が多くてはっきり将生だと確認することができない。だけどあまり近づきすぎると、気づかれそう。

 あ、電話……!
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