かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
『素直になりたい』
 由良の家に押しかけてから、どれくらいの時間泣いていただろうか。由良はずっと私の隣に寄り添い、優しく背中を撫でてくれた。

 そして涙も止まってきた頃、キッチンでハーブティーを淹れてくれた。
 柑橘系の爽やかな香りがして、ホッとする。

「オレンジピールなんだけど、神経を鎮静させる効果があるの。……今の小毬にはピッタリでしょ?」

「……うん、ありがとう」

 そっと口に含むと、オレンジの酸っぱさの中にほんのり甘みが広がる。ゆっくりと飲んでいると、さっき思いっきり泣いたおかげで落ち着いてきた。

「ごめんね、由良。突然家に来て泣いて……」

 それなのになにも聞かず、私が泣き止むまで待っていてくれた由良に感謝の思いしかない。

「全然! 嬉しいよ、小毬に頼ってもらえて。……だけど理由は聞かせてもらおうかな。なにがあったの?」

 由良は再び私の隣に腰を下ろし、聞く体勢に入る。

 自分ひとりでは到底解決できない問題。頭の中を整理しながら、敬子との間にあったことを打ち明けた。

「そっか、それは私が小毬の立場でもどうすることが正解なのか、わからなくなるな」

「え、由良も?」

 聞き返すと、彼女は頷いた。
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