かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 勢いよく私の身体を離すと、髪をわしゃわしゃされてたまらず声を上げる。

「わっ!? ちょっと由良!?」

「元気を注入してるの!」

 そう言って散々私の髪をグチャグチャすると、由良は満足して立ち上がった。

「さて、元気になったところでお腹空かない? 久しぶりに夕食一緒に食べよう。私なにか作るから。……あ、『将生のご飯を用意しなくちゃいけないから帰る~』は、ナシだからね! 結婚してからずっと小毬を独占しているんだから、たまにはひとり寂しく食事すればいいのよ」

 悪い顔をして笑いながら言う由良の言葉に、先ほど見た光景と、将生とのやり取りが蘇る。

 せっかく由良のおかげで、前向きな気持ちになれたのに……。

 将生が自分以外の女の人と一緒にいたところを思い出しただけで、ポロポロと涙が零れ出す。

「え、ちょっと小毬!? どうしたの、また泣いて!」

 慌てた由良にティッシュを渡され、数枚取って涙を拭うものの、次から次へと溢れて止まらない。

「由良、私……気づいちゃったの、自分の気持ちに」

 オロオロしながら膝をつき、由良は私の肩を撫でた。
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