かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
「絶対小毬が俺にしたい話って別れ話ですよ。……最近、うまくいっていると調子に乗っていたから、バチが当たったんです。本当は昨夜、洋太たちのことを小毬に話すつもりだったんですよ。きっと小毬なら、一緒に喜んでくれると思ったから。……悪いな、洋太。小毬と一緒に結婚を祝ってやれなくて」

 食事の時に話したいことがあるって言っていたのは、秋田さんたちのことだったんだね。それなのに本当に私ってば……。

 でも、えっと……目の前にいるのは本当に将生なの?

 初めて見る姿に、驚きを隠せない。本当、まだまだ私の知らない将生の一面がたくさんあるようだ。

 なにより私たち、言葉にして伝え合って、もっともっとお互いのことを知らなくちゃだね。

 するとさっきまで黙って話を聞いていた秋田さんは、我慢できなくなり噴き出した。

「アハハハッ……! だめだ、我慢できない!」

 突然笑い出した秋田さんは、大きく身体を揺らすものだから隠れるのに必死になる。

「洋太、お前……! 沢渡さんに別れ話を切り出された時に、話を聞いて励ましてやった恩を忘れたのか? 俺がどれだけ身を削ってやったか……!」

「忘れてないよ。……だからその恩を、浩美さんと返しにきたんだ」

 笑いをこらえながら言うと、秋田さんはチラッと私を見た。そして再び前を見据え、ゆっくりと横にずれる。
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