かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
「沢渡さんと一緒にいるところを見て、浮気だと思ったんだよな? どうして……?」

 そこまで言いかけた将生の声に自分の声を被せた。

「将生のことが好きだから」

 初めて口にした『好き』って言葉。

「沢渡さんと一緒にいるところを見て、初めて醜い感情に覆われて……。嫉妬した。将生の隣に、私以外の女性が立つのが嫌だった。それで将生のことが好きだって気づいたら、頭の中がグチャグチャになっちゃって……」

 一度口にすると想いは溢れて止まらなくなる。

「沢渡さんと目が合って逃げちゃったの。それで勝手に不安になって避けてごめんね。でも将生のことが好きだから、真実を知るのが怖くて聞けなかった」

「好き……? 小毬が俺を?」

 信じられないようで、復唱する将生に大きく頷いた。

「うん、大好き。……本当は気づけなかっただけで、ずっと昔から好きだったのかもしれない」

 ただ、頑なに好きだと認めたくなかった気がする。将生は私に冷たくて、嫌われていると思っていたから。

「だからこれからもっといろいろな将生を見せて。だって私、将生のことで知らないことがまだたくさんあるから。さっきみたいに私の前でも弱音を吐いてほしい」

 あんな姿、私には見せてくれたことがないもの。

 その思いで言うと、将生は急にその場にしゃがみ込んだ。
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