かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
「え……どうしたの? 将生」

 私も彼と視線を合わせると、将生はジッと私を見た。

「このタイミングで好きとか……まだ夢みたいで信じられない。もしかしたら、小毬に好きになってもらえることは一生ないと思ってもいたから。それなのに嫉妬してくれたとか、俺が喜ぶことを言うとかずるいだろ」

 ちょっぴり拗ねた顔で言う将生に、不覚にも胸がキュンとしてしまった。

「小毬は弱音を吐いてほしいっていうけど、いいのか? カッコ悪い俺を見せても」

「うん、たくさん見せてほしい」

 すると将生はそっと私の手を握り、真剣な瞳を向けた。

「もう信じてもいい? 小毬が初めて好きになったのは俺だって。……気持ちが通じ合えたって」

 私の気持ちはまだ届いていないようで、彼の瞳は大きく揺れた。

「うん、信じて」

 私は将生のことが好きだから。

 彼の手を握り返すと、やっと信じてくれたのか手を引かれ抱きしめられた。

「夢みたいだ……小毬が俺を好きになってくれたなんて」

 将生のぬくもりに包まれると、安心感を抱くようになったのはいつからだろう。なぜかホッとする。

 もっと彼のぬくもりを感じたくて、背中に腕を回そうとした時、ずっと握っていた指輪が手から落ちた。

「あっ……」

 音を立てて転がる指輪。すぐに将生が拾ってくれた。そのまま手を引かれ立ち上がると、左手を握られドキッとなる。
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