かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
「小毬が生涯好きになる男は俺だけであってほしい。……ずっと好きでいてもらえるよう、毎日好きって伝え続けるから覚悟して」

 愛しそうに見つめられて放たれた言葉に胸が苦しくなる。

 再び左手薬指にはめられた指輪。将生と結婚している証――。

「私もずっと将生に好きでいてもらえるよう、頑張るね」

 人の気持ちは変わるものだと思う。でも変わらない想いもあると信じたい。それはきっと、努力の先にあるものだと。

「その努力はいらないと思うけど」

「えっ?」

 目が合うと、将生は得意げに言った。

「俺が小毬を嫌いになることは、絶対あり得ないから」

「将生……」

 自信満々に言われると、恥ずかしいんだけど嬉しくて、気持ちが大渋滞しちゃう。

 このなんとも表現し難い感情は表に出ていたのか、将生はクスリと笑った。

「好きだよ、小毬。……もうなにがあっても離してやらないから」

 彼の大きな手が触れて、ゆっくりと距離が縮まる。そのスピードに合わせるように、そっと瞼を閉じた。心の中で「私も大好き」と囁いて。

 唇が重なった瞬間、甘酸っぱい気持ちが胸いっぱいに広がった。将生のことが好きと気づいて、初めて交わしたキスだからだろうか。
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