かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 すぐさま小毬は額を押さえて抗議してきた。ムキになる姿も一々可愛いから困る。

「抱かないとは言ったけど、キスをしないとは言っていないだろ?」

 意地悪心に火が付き、頬をすり寄せると小毬は恥ずかしそうに俯く。

「そこまで紳士にはなれそうにないから、悪いけど受け入れて。それとさっきも言ったけど、寝室は絶対一緒」

 頬や瞼、鼻と次々とキスを落とすたびに小毬は甘い声を漏らす。このままベッドの上にいたら、また小毬を襲ってしまいそうだ。

 それでも離れがたくて、最後に唇にキスをしてベッドから降りた。

「夕食にしようか」

 そっと彼女に手を差し伸べると、戸惑いながらも手を掴んでくれた。

「……うん」

 今は手を取ってくれる彼女の気持ちを信じて、これからの日々の中で自分の気持ちを伝えていこう。

 小毬の手を握り、心に決めた。



「おいおい、どうしたんだ? その顔は。昨日とは別人だぞ?」

「うるさい」

 出勤してメールのチェックをしていると、ノックもナシに入ってくるなり悪態をついてきたのは、中学時代からの悪友であり、仕事上の頼れるパートナーでもある洋太だ。
< 30 / 265 >

この作品をシェア

pagetop