かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました

　高校生の頃、雑誌で高校生ながら起業し、年間数億円を稼いでいるという記事を見つけた。

　それを洋太と見て、いつか自分たちも会社を設立できたら……と冗談交じりに話したのが、ふたりで会社を設立したきっかけ。
　何度も話をするうちに、本気で経営者になりたいという気持ちが大きくなっていった。

　俺にもそうしたい理由があったように、洋太にも切実な事情があった。

　洋太の家は母子家庭で、高校生の弟と中学生の妹、さらに小学生の双子の妹がいる。

　病気で亡くなった父親に代わり、高校・大学は奨学金で進学してバイトに明け暮れながらも、いつも俺とテストでトップ争いをしていた。

　大変なはずなのに、苦労しているところをまったく感じさせない。絶対に本人には言えないが、そんな洋太を俺はずっと尊敬していた。

　働きづめの母親にラクさせてやりたい、弟や妹に我慢させることなく生活させたいという洋太の思いに感銘を受け、力になりたいと思ったんだ。

　準備を進め、大学へ進学して半年後に起業。俺が代表取締役を務め、たったふたりだけのアプリ会社【ドリーム】を設立。

　生活に必要なアプリを中心に開発を進め、多くのユーザーを獲得し、設立から五年目を迎える。