かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 狭いベッドの上では、どうしても小毬と身体が触れてしまい、間近に彼女がいると思うとたまらなくて、目は冴え、眠ることができなかったのだ。

 自分から両想いになるまで抱かないと宣言したことを、少しばかり後悔している。

 その日まで俺の理性が持つか不安だ。……早いところキングサイズのベッドを買いに行こう。

 そんなことを考えている間に手は止まっていて、確信を得た洋太は立ち上がり、こっちに近づいてきた。

「その様子だとやっぱり小毬ちゃん絡みだな。なに? お前とは違って小毬ちゃんは政略結婚だって割り切っていて、本当はずっと嫌いだったとか言われたのか?」

 笑いながら言う洋太は、冗談のつもりだったんだろう。……しかしそれが現実かもしれないから、こっちは笑ってなどいられない。

「え、なに? まさか本当に言われたのか?」

 なにも言わない俺に焦り出す洋太。こいつに打ち明けるのは気が引けるが、今は誰かに話を聞いてほしい。

 その思いでいっぱいになり、昨夜のことを打ち明けた。

「いや、嫌いとは言われていないが……苦手とは言われた。それと、小毬は俺にずっと嫌われていると思っていたらしい」

 他にも寝室を別々にされていたことや、小毬の反応などを話すと、洋太は顎に手を当てて考え込み、俺のデスクに寄り掛かった。
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