かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
そしてしばらく考え込んだ後、俺を見ながら言いにくそうに口を開いた。

「俺はさ、昔からずーっと心配していたんだ。小毬ちゃんはお前のこと好きじゃないのに、家のために我慢しているんじゃないかって」

 遠慮なく言われた言葉が、鋭い刃と化して胸に突き刺さる。

 いや、俺もなんとなく昨日の小毬の様子を見て感じてはいたが……こうもはっきり言うか?

 さらに容赦なく洋太は続けた。

「そもそも、あ~んな冷たい態度をとっておきながら、好かれていると思っていたことが俺には理解できなかったんだ。いくら小毬ちゃんを守るためだからと言って、なにも言わずに他の子と付き合ったり、好きって気持ちが止まらなくなるから、素っ気ない態度をとったり……。普通、そんなことされたら嫌われていると勘違いして当然だぞ?」

 一度口を開いた洋太は止まらず、俺が言い返さないことをいいことにさらに責め立てる。

「小毬ちゃんもこんな将生とよく結婚までしてくれたと思うよ。……言えばいいじゃん。わざわざ公立中学校に転入したのは、婚約していることを知られて、小毬ちゃんが女子からいろいろ言われていたからだって。この会社だってそうだ。あんな大手の重役に就ける未来が約束されているのに、わざわざ俺と危ない道に進んだのは、将来、煩わしい社交の場で小毬ちゃんに嫌な思いをさせないためだろ?」

「そうだけど……そんなこと、わざわざ言うことではないだろ?」
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