かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
恩着せがましい気がしてならない。だからこれまで口にして小毬に伝えたことはなかった。
だけど洋太はそう思わないようで、オーバーに額に手を当てた。
「これだからお前は……。どうしてなんでもソツなくこなすくせに、恋愛のことになると不器用になるんだよ。……いや、不器用を通り越して面倒だ」
不器用を通り越して面倒って、あんまりじゃないか?
「そこまで言うことないだろ? それにこれからは、ちゃんと気持ちを伝えようと思っているし」
「具体的にどうやって?」
「それは……」
すかさず聞かれたことに、すぐに答えることができない。
小毬に自分と同じ気持ちになってほしいと願ってはいるが、具体的にどうすればいいのか。正直、よくわからない。
すると部屋をノックする音が聞こえてきた。
「社長、失礼します。明日の会食の件でお話が……」
社長室に入り、洋太がいるのを見るや否や、二年前から秘書を務めてくれている沢渡(さわたり)浩美(ひろみ)はあからさまに嫌悪感を露わにする。
俺たちより五歳年上の彼女は、トレードマークの眼鏡のグリップを上げて厳しい目を洋太に向けた。
だけど洋太はそう思わないようで、オーバーに額に手を当てた。
「これだからお前は……。どうしてなんでもソツなくこなすくせに、恋愛のことになると不器用になるんだよ。……いや、不器用を通り越して面倒だ」
不器用を通り越して面倒って、あんまりじゃないか?
「そこまで言うことないだろ? それにこれからは、ちゃんと気持ちを伝えようと思っているし」
「具体的にどうやって?」
「それは……」
すかさず聞かれたことに、すぐに答えることができない。
小毬に自分と同じ気持ちになってほしいと願ってはいるが、具体的にどうすればいいのか。正直、よくわからない。
すると部屋をノックする音が聞こえてきた。
「社長、失礼します。明日の会食の件でお話が……」
社長室に入り、洋太がいるのを見るや否や、二年前から秘書を務めてくれている沢渡(さわたり)浩美(ひろみ)はあからさまに嫌悪感を露わにする。
俺たちより五歳年上の彼女は、トレードマークの眼鏡のグリップを上げて厳しい目を洋太に向けた。