かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
『結婚は自由のはじまり……だったはず』
 大学の卒業式からわずか二日後の大安吉日。純白のウエディングドレスを纏い、都内とは思えない緑に囲まれたオシャレな教会で、多くの参列者が見守る中はじまった結婚式。
 ずっとずっと、この日がくることを待ち望んでいたの。

「村瀬(むらせ)将生(まさき)さん、あなたは荻原(おぎわら)小毬(こまり)さんを妻とし、神の導きによって夫婦になろうとしています。汝、健やかなるときも、病めるときも、喜びのときも、悲しみのときも、富めるときも、貧しきときも、これを愛し、敬い、慰め合い、共に助け合い、その命ある限り真心を尽くすことを誓いますか?」

 片言の日本語で言われた外国人牧師に、将生はすぐに答えた。

「はい、誓います」

 すぐに私も同じことも聞かれ、彼と同じく「誓います」と答える。
 お互いの左手薬指に永遠を誓う指輪をはめて、挙式はクライマックスを迎えた。

「それでは誓いのキスを」

 牧師の言葉に、私たちは向かい合う。

 私より身長が二十三センチも高い百八十三センチの将生は、屈んでゆっくりと私のベールを捲った。
 ずっとぼやけていた視界が広がると、すぐ目の前には整った将生の顔。

 真っ先に目がいく二重の切れ長の瞳。くっきりある涙袋が彼の瞳の大きさをより強調している。
 艶のある黒髪はしっかりセットされていて、今もジムに通って鍛えている身体に黒のタキシードがよく似合う。
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