かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 羨ましくなるほどのきめ細かな綺麗な肌と、鼻筋が通っている高い鼻。厚みのある下唇のすぐ下には黒子があって、それが妙に色っぽい。
 
 もう何度もくちづけを交わし、肌を重ね合わせてきたというのに、なぜ私はドキドキしているのだろうか。
 
 多くの人が参列しているから高揚しているの? ……それともやっと自由になれるという開放感から?

 どちらかわからない。……わからないけれど、今日でやっと私は自由になれるんだ。

 ゆっくりと将生の顔が近づいてきて、私はそのスピードに合わせてそっと瞼を閉じた。

 そして唇が重なった瞬間、二十二年間の人生が走馬灯のように駆け巡った。

***

 将生と出会ったのはいつだろうか。思い出せないほど気づいたら隣にいるのが当たり前だった。

 私たちを取り巻く環境を知る由もなかった幼少期は、将生と一緒に遊ぶのが楽しかった。
 同じ幼稚園に通い、同性の友達より将生といる時間のほうが長くて、休日も会っていたほど。

 姉弟がいない私にとって将生は家族のような、親友のような。そんなかけがえのない存在だった。

 でも小学校に上がり、周囲の目がおかしいことに気づいた。友達に「どうして小毬ちゃんはいつも将生君と一緒にいるの?」と聞かれ、不思議に思った私は両親に尋ねた。そこで初めて将生との関係が普通じゃないことを知った。
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