かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
 私たちは生まれる前から決まっていた許婚。
 将生の父親は、社名を口にすれば誰でもわかるほど有名な家電メーカーの社長。一方で私の父親は、将生の会社から受注を受けて部品を製造している町工場の社長。

 住む世界が違う私たちが許婚なのは、父親同士が高校時代からの友人だからだ。
 ほぼ同時期に母親の妊娠が発覚し、お互いの子供が男の子と女の子だったら結婚させようと約束を交わしたのだ。

 そして無事に一ヵ月違いで生まれた私たちは、すぐに許婚の関係となった。

 しかし、私たちの関係は父親同士が親友だからではなく、大人の事情が絡んでもいた。

 将生の会社は私の父親が開発した特許の部品の使用を独占し、その対価をうちの工場は受け、業績はうなぎ上り。
 ウインウインの関係をこの先もずっと続けていくためにも、私たちの結婚は必須だったんだ。それを小学校高学年になって初めて理解した。

 それは将生も同じだったのかもしれない。

 この頃から私たちの関係は変化した。一緒にいる時間は減り、学校ではまったく話さなくなったから。

 私が友達から将生とのことでいろいろ聞かれ、言われていたように、将生も私とのことで友達にからかわれていたのかもしれない。

 それが嫌だったのか、せっかく幼稚園から大学まで上がれる学校に入学したのに、中学は公立校へ進学すると言い出した。もちろん私も一緒に。

 だけどそれは、両親への建前だったんだと思う。中学生になると、ますます将生と疎遠になっていった。

 そして私と婚約しているのに、将生はたくさんの子と付き合うようになった。どの子とも長続きしなかったけれど、よく他の子と一緒にいるところを見かけていたから。
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