かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
「正直に話すね。……将生とは幼い頃からずっと一緒にいたでしょ? だから私にとって親友のような兄妹のような、そんな存在だった。……初恋を経験する前に両親から将生との関係を聞いて、今まで誰かを好きになったことがなかったの」

 一呼吸置き、真っ直ぐに将生を見つめた。

「将生のことも、そう。……嫌われていると思っていたし、態度も冷たかったでしょ? だからその……私は将生のことが嫌いだった」

 はっきりと『嫌い』と告げた瞬間、将生の瞳が大きく揺れた。

「結婚することが決まっていたから、恋愛をすることを諦めていたし、誰かを好きになりたいとも思わなかった」

「……そっか」

 次第に彼の目線は下がっていき、力なく呟くと顔を伏せた。

 やはり傷つけてしまったよね。でも言わずにはいられない。

「だから将生に告白されてすごく驚いたし、戸惑った。どうしたらいいのかわからなくて、自分のことで精いっぱいで……。将生の気持ちを考える余裕もなかったの。……ごめんね」

「いや、考えれば当然だよな。俺との結婚が嫌でも、小毬は断れる立場じゃなかったし」

 自傷気味に笑う姿に、ズキッと胸が痛んだ。

 お父さんたちの関係を考えると、とてもじゃないけれど結婚が嫌とは言えなかったし、そういう運命なんだと諦めて受け入れていた。
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