かりそめ夫婦のはずが、溺甘な新婚生活が始まりました
『旦那様、嫉妬する』
 息苦しさを感じて目を覚ますと、背後からがっちりと身体をホールドされていた。そして聞こえてきたのは規則正しい寝息。

 起こさないように後ろを見ると、将生がスヤスヤと眠っていた。それなのにこうも強く抱きしめられていて、本当に寝ているのかと疑問が浮かぶ。

「将生……?」

 そっと名前を呼ぶものの、反応がない。どうやら熟睡しているようだ。

 入社式から二週間が過ぎたけれど、毎朝ずっとこんな感じで目が覚める。そういえば最近、目覚ましが鳴る前に起きているかもしれない。

 彼の腕の力が緩み、ゆっくりと寝返りを打って将生と向かい合う。

 ここ数日、こうして将生の寝顔を眺めるのが日課になりつつある。

 幼い頃はよくふたりで昼寝をして、何度か将生の寝顔を見たことがあった。どんなに大人の男性に成長したって、寝顔が可愛いのは変わっていなくて、毎朝眺めてはニマニマしてしまう。

 結婚してから初めて将生に抱かれた日の夜、自分でも驚くほど彼を求めてしまった。あんな気持ちを抱いたのは初めてで、正直今も戸惑っている。

 でも将生と過ごす日々は心地よくて、こうして同じベッドで寝ることも日常になりつつあるし、なにより朝起きて隣に彼がいると安心する。

 これが好きって気持ちなのだろうか……?
< 79 / 265 >

この作品をシェア

pagetop