Serious Finght ー本気の戦いー
#視点変更 美咲
朝。
カーテンの隙間から朝日が見える。毎日この朝日に起こされているが、今日は何故か目覚めが悪い。
無理に体を起こしまわりを見渡すと自分の部屋にいた。
だけど昨日の記憶が曖昧だ。朝だからなのか、昨日殴られた痛みのせいなのか。
昨日ひとりで家に帰れるはずがない。なのにどうして…
昨日の事を必死に思い出していると夜月の顔が浮かんできた。そうだ。昨日、夜月の顔を見た瞬間体の力が一気に抜けて倒れた事を思い出した。
ここにいるのは夜月と実樹のおかげだと悟った。
ベッドから降りようとすると頭に強い痺れが走った。鏡で自分の頭を見てみると包帯がぐるぐるにまかれている。これもきっと夜月が手当てしてくれたんだろう。
そんな事を思いながら、立ち上がると頭にまた強い衝撃が走る。でも学校に行かないと、あいつらに心配かけるだけだと思い、家を出た。

歩くたびに痛みが走るが、ただの頭痛だと思えば耐えられると自分に言い聞かせ、学校へ向かった。

屋上に着くとふたりが待っていた。
【実】「あ、! おはよー!!美咲大丈夫なの?」
実樹はいつもと変わらず元気がいい。でも、実樹なりに心配もしてくれた。
【美】「おはよ」とだけいい実樹の隣に座った。
すると夜月が、「頭、大丈夫なの?休んでも良かったんだよ」と言い昨日とはまるで別人の様な声だった。でも夜月らしいな。そんな事を思いながら、「大丈夫だ」と強がった。迷惑かけたくないしと内心思っていたがそんな事を言ってしまったら夜月に帰れと言われてしまう。
それに、家にいるよりもここにいたほうが寂しくない。昔のことだって忘れられるから。
夜月は私が言った言葉に「ふーん」とだけ言い、空を眺めた。
学校のチャイムが鳴ると同時に私たちは本部基地へと向かった。
本部基地にはいつもいるアイツらがいなく、少し静かだった。実樹は前回玲央にイチゴミルクを飲まれたため、少し不貞腐れ気味だったがそこは無視した。面倒くさくなるだけだし。
お昼頃、急に本部基地のドアが開いた。物凄い音がしたので私たちは肩が上がってしまった。
そこにいたのは、少し傷だらけの3人がいた。しかも息が荒い。誰かに追いかけられたのか?と聞くと「警察」と返ってきた。ケンカしてる最中に見つかってしまったらしい。
夜月が3人を座らせ、手当てをし始めた。すると玲央が手に持っていたコンビニの袋を実樹に渡した。実樹は、その中に入っているものが一瞬でわかったらしく、目をキラキラさせて玲央にお礼を言っていた。
玲央は実樹の嬉しそうな顔を見て、クシャっと笑っている。その光景を見ていた私も何故か、初々しいしいなぁと思ってしまった。
3人とも手当てが終わり、渚が自分の手に持っていた紙を私達に見せてきた。
【渚】「これ、さっき壁に貼ってあったんだけど……」
その紙に書いてある字を見てみると、近所の高校狼虎高校の不良達が、私達とケンカがしたいという内容だった。
しかし、今の私じゃキツい……でもやらなきゃ。やる気があれば大丈夫だろうと思い、行く気であったが夜月に止められた。
【夜】「美咲は来なくていい。私と実樹で行く」と言われた。夜月の目は本気だった。逆らおうものなら殺される。私は少し表情をきつめたがまた夜月が口を開いた。
【夜】「美咲さ、隠してるつもりなんだろうけど、隠しきれてないよ?……頭、痛いんでしょ?そこで無理して余計悪化したらどうするの?あなたの生き甲斐がなくなってしまうかもしれないんだよ?」と強く念をおされた。そうだ。この頭のせいで一緒ケンカが出来なくなってしまうかもしれない。私の生き甲斐がなくなってしまうかもしれないんだ。そう思うと胸が苦しくなる。
きっとふたりなら大丈夫だ。そう信じて背中を押すしかないな。
【美】「わかったよ。ふたりでケンカしてこい。」
【夜】「任せて」ふたりでハイタッチをし、夜月と実樹は私のいない夜をむかえた。

#視点変更 夜月
美咲のいない中私は実樹とふたりで近所にある狼虎高校へと向かった。実樹はいつも通り、イチゴミルクを飲みながらきている。今日は珍しく遅刻してこなかったから、テンションが上がっていた。
狼虎高校に着き、校門をくぐり抜け、裏校舎へと向かった。裏校舎へ向かう道はとても人の気配がして気味が悪かったが気にせず突き進んだ。
少し先に人影が見えたのでその場に立ち止まると、彼はこちらへ進んできた。
「よぉ、俺は狼虎高校の番長、灯鳴 明だ」と言い、何かの合図を出した。その瞬間草かげに隠れていた、不良達がウジャウジャと出てきて、私達の周りを囲んだ。
私は彼に向かって「集団攻撃しかできない人たちばかりね。まぁ、気づいていたけど。」少し呆れ気味に言ってみた。人がいることはずっと前から気づいていたが、こんなにいるとはね。
その言葉に反応した彼は、「さすが、天才頭脳星空夜月だ。」と言い私を褒めたのか、けなしたのかわからない口調だ。
天才頭脳のことはさておき、そろそろ片付けて帰りたい。私と実樹は顔を見合わせ頷き、攻撃に出た。
実樹の動きはとても早い。男達でも追いつかない速さで不良たちを圧倒している。私も攻撃力と分析能力を活かして不良たちをボコボコにした。
ほとんど倒し終わり残りひとりとなった。
【夜】「ごめんね。全員やっちゃた。……残りはあんただよ。」
彼を強く睨みつけ実樹の行動をかき消した。
静かに彼の後ろにまわった実樹は、木の上に登り夜月に合図を送った。そのことに気づかずただひとりでビクビクしてる彼を見て最後の挨拶をした。
【夜】「早く帰りたいんだ。……もうくたばんな。」そう言い終わると木の上から、彼に飛びかかる実樹を見て笑ってしまった。彼は私に殺されると思っていたらしく、実樹にやられるとは想定外だったらしい。
汚い悲鳴をあげながら、彼はその場に倒れ込んだ。
私達はふたり揃って狼虎高校の校門をあとにした。

実樹と別れひとりで歩いていると、少し目の前が歪んで見えた。
ふらふらしながら歩いていると、石に躓き倒れかけた。しかし、誰かが私の肩を抱き寄せてくれた。その人の方を見ると、見慣れた顔があった。
聖也だ。聖也が私を助けてくれたのだ。
【聖】「あっぶね。大丈夫か?」そう言って私を支えてくれる。
【夜】「ありがとう。聖也」いつもあまり口にしない言葉が出てきた。
まぁ、流石にお礼言わないとなとは思ってたけど、言わなくても幼馴染だし伝わってるとばかり思っていた。
でもお礼を言ってみるのもいいかもしれない。そんな事を思いながらふたりで歩いた。
【聖】「心配だから送ってってやるよ」なんて、いつも一緒に帰ってるクセに。
【夜】「いつもじゃん」
【聖】「いいだろ。別に。ひとりで帰るよりよっぽどマシだっつーの。」そう言うと聖也は私の手をとった。
【夜】「なっ!」私は驚いてしまった。だって、手を繋ぐことなんて小学生以来なかったから。
【聖】「へッ、懐かしいだろ?」彼はニヤリと笑い、握っていた力を少し強めた。
【夜】「懐かしいけど……」少し照れくさそうに言ってみた。
昔はこうやってずっと聖也の手を握っていたんだなと、思い返した。
家に着くと、繋いでいた手を離され「じゃあな」と言い聖也は帰って行った。
聖也といると落ち着くし、いつもの自分でいられる。ほんとに大切な存在なんだなと改めて思った。
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