二人のないしょ話
小泉さんはクスクス笑って、

「間違えてくれて、ありがとう」

と言い、「愛してる」と手話で言った。



心臓がバクバクと大きな音を立てた。

もうすぐ自分たちの出番だ。舞台では漫才が披露されていて、笑い声が聞こえてくる。

しかし、緊張した俺の耳には内容は入ってこない。

「もうすぐだね」

小泉さんが俺の隣で言った。

「失敗したらごめん」

うつむく俺の手を、小泉さんがそっと握る。

「大丈夫。自分を信じて」

小泉さんは両手で拳を作って並べ、二回下げる。「頑張れ」だ。

俺は「ありがとう」と手話で返す。

「次は、一年生二人による「手話ソング」です」

司会の声と拍手が響く。

「行こう!」

「うん!」
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